飛騨高山で情熱料理人と出会う1「肴」 

東京に住んでいると、世界中の美味しいものを食べることができる。

しかし、旅先で出会うその土地ならではのおいしいものは、また格別。

土地を愛し、土地の食材を慈しみ調理する、情熱料理人に出会えれば、私の旅はほぼ満足できるものとなる。

旅先が決まったら、食べログを見たり、できうる限りの方法で情報を集めて、行くべきお店を探す。ここで手を抜いて、当日、適当な店に入ってハズレだったりすることもママある。後悔したこと数知れずだ。

今回、飛騨高山へ出かけることになり、「ここで晩ご飯を食べたい!!」と思ったのは、偶然見つけた店主のブログ「飛騨季節料理 肴店主の日記」がきっかけだった。

 

http://d.hatena.ne.jp/sakana-tensyu/

 

店主の今井さんは、年間を通して飛騨の山に分け入り、秋はキノコ、夏は渓流釣り、春は山菜、と自ら収穫ししたものを調理し出している。

ブログでは、どんなものを採ってきたか、どんな料理を作ったかなどが実にこまめにアップされていて、まず、その写真の美しさにひかれる。

秋のこの季節は、見たことも聞いたこともないキノコがいっぱい紹介されていた。

 

店は高山駅から南へタクシーで10分ほど走った郊外にある。闇のなかに白いスクエアな建物が浮かび上がり、入口には紫ののれんがかかっている。

 

のれんをくぐり、長いアプローチを抜けた先には、カウンターのある空間が広がり、先客が1組。ブログで見た店主がにこやかに迎えてくれる。

先客から2~3席あけた場所に、我々のスペースも用意されていた。

まず目に飛び込んできたのが、キノコが盛り付けられた皿。

 

「お~。これこそ真の天然キノコなんですね!」

色といい、香りといい、自然の恵みを受けて育まれたものには別格の存在感がある。

思わずハナ先を近づけて、犬のようにクンクン。

手前の紫色のがムラサキニセアブラシメジ、左の黒いのがクロカワ、真ん中がクロマイタケ、奥のメロンパンみたいのはアカヤマドリというのだそうだ。

「すご~い」とキノコに見とれていると、今日採ってきたばかりというマイタケも披露してくれる。手前はクロマイタケで、「歯ごたえの良さ、香りともに抜群」だとか。そういえば今朝行った朝市で、天然マイタケ(茶色)が1株3,000円で売られていた。その値段の高さにちょっとびっくりだったけど、それよりもさらに立派な株だ。相当貴重なものなんだろう。

 

 

カウンターの前には大きなモニターがあり、そこには店主が撮影したキノコが生えている場所や飛騨の山々の風景が次々と映し出される。

同行のプロカメラマンもびっくりの映像の美しさに見とれていると「マイタケはナラの古木に、ナメコはブナの倒木に生えます」と店主。

飛騨の山深くに分け入り、山の生気を吸った気分で、食事がスタートする。

まずはキノコの前菜。

大きな染付けの皿に、キノコの佃煮や旨煮が少しずつ並んでいる。

手前より時計回りに、カラスダケ(カラスマイタケ)、キシメジ、サクラシメジ、もう一個味付けが異なるサクラシメジ、ホウキダケ、クロカワ、チャマイタケ、シャカシメジ。(もし間違えていたらゴメンナサイ。店主が説明してくれるのだけど、いっぺんに覚えきれなかったもんで。とにかく店主の今井さんは、料理作りに、キノコの説明にと、ひと時たりとも休むことなくパワー全開で動いておられます)

皿の上のキノコは、それぞれ香りや食感が異なり、それに合わせて味付けも変えてある。

 

 

先付けに富山の太モズク(右)、味女(あじめどじょう)のあめ炊きなど。味女は鮎と同じ食性で、綺麗な川の玉石に付くコケを食べて大きくなるもので、川魚の中でも大変希少なものらしい。これも今回初体験だ。

 

 

お造りは富山や北海道からの素材。カジキ、マグロ、ブリ、ニシ(貝)、ミズダコなど。

 

 

モニターに映し出される映像が、冬の山の景色に。

「樹氷はボテッとしてるけど、霧氷は繊細で本当にきれいですよ」

「山に立っている鉄塔が好きなんです。頑張ってる感じがいいんですよ」

独特の鋭い感性と美意識をお持ちの今井さん。

そして話題は自然と冬の食材の話に……。

「クマはおいしいですよ。背脂のニギリなんかとろけますよ~」

「イノシシも最高! うちでは3~4歳くらいのメスで、ドングリ食べて育ってるイノシシを出しています。知り合いのマタギさんには『そんな簡単に獲れねーぞ!』って叱られていますが、『獲れたぞ~』って、電話がかかってきて出かけていくと、いつも、ちゃんと、私の欲しいイノシシが用意されています」

う~ん、冬にもまた来たくなるではないか。

今井さん、なかなか営業トークがお上手です。

 

 

キノコの土瓶蒸しが出たけど、撮影するのを忘れ、子持ち鮎の塩焼きも食べ終えてから、写真とっとくんだったと後悔。

私、目の前においしそうなモノが出てくると、気持ちがすぐにそちらに移って、写真どころじゃなくなるんです!!

 

 

 

 

気になる方は

http://f.hatena.ne.jp/sakana-tensyu/20120930194216

http://f.hatena.ne.jp/sakana-tensyu/20120930194215

から見てみてくださいませ。

背びれ、胸びれだけを取って、骨ごと、腸ごと筒食い。

「これには不思議とスーパードライがあいますよ。いろいろ試してみたんだけど…」という店主の助言に素直に従い、我々もスーパードライとともに味わった。

 

 

マイタケなどのキノコの天ぷら。香りと食感は養殖ものとは格段に違う。

 

 

アカヤマドリダケ(メロンパンみたいなキノコ)をベースにしたクリームシチューが一口。このアカヤマドリダケは、不思議と和風の調理法には合わないらしい。

 

 

今日、とってきたばかりのクロカワをオリーブオイルでソテーして。しっかりした噛みごたえと、芳醇な香りがやみつきになる美味しさ。

 

 

続いてホウキダケのお刺身。見た目がアワビのようで、シャキッとした食感がたまりません。私はワサビ醤油でいただく。

 

 

アマダイの兜煮

飛騨牛のソテー

 

 

 

締めは、赤米と黒米が入ったご飯とキノコの味噌汁。

かみしめるほどに甘さの広がるご飯と、今井さんのお母さんが作られているというお味噌を使った味噌汁が本当に滋味深く、ぜいたくな味わいだった。

 

食事のスタートが7時で、食べ終わったのが10時頃。

カウンターの2組4人の客を相手に、料理とキノコの説明、映像の解説にと孤軍奮闘の今井さん。

 

毎日、朝5時には山へ入っているという。この情熱とパワー、半端ない!!

「京都や東京には素晴らしい料理人がっぱいいる。そんな人たちにはかなわないけど、おいしいものを食べてもらいたい、ホンモノの味を知ってほしい、と思って毎日のように山に入って、食材を探している。その季節にしか味わえない素晴らしい食材を、シンプルに最も適した調理法で食べていただく。その点においては、どんなすごい料理人にも負けない自信がある」と。

まったくその通り!

今回の飛騨高山の旅は、今井さんと出会えたことで、さらに色濃く、印象深いものになった。

 

空間も店主の夢が詰まった素晴らしいもの。

中庭があり、離れの食事処も用意されている。

 

※今回たのんだ料理は10500円のおまかせコース。クロカワのソテー、フクロダケのお刺身は、この日サービスで出してくれた。予約が必要。

http://www.gix.or.jp/~sakana/

 

※次回は飛騨高山のイタリアンをお届けします。こちらもおすすめです。

(土井ゆう子)

 

 

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4 Comments

  1. ヘッケル

    RIKAちゃん。それはもう。
    こんな人と出会うと、旅先での食事が本当に楽しくなりますね。機会があったらぜひ行ってみてください。

  2. tomoko

    天然のきのこ、まだ生まれて一度も食べたことがありません。
    昔、取材したお菓子の先生のだんなさんが都内でフレンチレストランを経営されていましたが、「秋になると全国の天然のきのこを求めて1か月以上帰ってこない」という話をされていたのを思い出しました。
    そこまでの味!一度味わってみたいものです。

  3. ヘッケル

    TOMOKOさん。ここのオーナーは「オガクズで栽培しているキノコは、オガクズの味しかしない」と言っていました。私はそれは言い過ぎだと思うけど、天然のきのこは、味の濃さも香りも、養殖ものとは別物です。でも、本当に今は貴重なものになっています。

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