ミーハー的英国文学の旅ーBBC(英国国営放送)ドラマに登場したお城巡り(2)

英国の地図を見ると、Derbyshireは西中央部に位置し、その地方のかなりの部分が英国人に人気のある「Peak District 国立公園」です。起伏に富む美しい田園風景が広がり、貴族の館や城が点在しています。

 

 

 

 

 

 

 

  Derbyshireの美しい田園風景                  映画にも登場するKedleston Hall

 

このDerbyshireはかつてはデヴォンシャー公爵の広大な領地だった地方で、12代目公爵夫妻が今も住む居城の「Chatsworth House」は、ウインストン・チャーチルの生家であるマールボロー公爵家の「Blenheim Palace」と並び、大きな城として有名です。

 

  豪華絢爛な公爵家の城「Chatsworth House」

この城はキーラ・ナイトレイが主役を演じた2005年の映画版「高慢と偏見」で、Mr. ダーシーの館である「Pemberley House」として撮影されました。さらには、2008年に再びキーラ・ナイトレイ主演の映画「ザ・ダッチェス(公爵夫人)」も、ここで撮影されています。特に「ザ・ダッチェス」は18世紀にこの「Chatsworth House」に実際に住んでいた5代目デヴォンシャー公爵夫人、ジョージアナ・スペンサーの話なんですから、ここで撮影されても不思議ではないですよね。余談ですが、波乱に満ちた人生を送ったジョージアナ・スペンサーは、ダイアナ元妃の祖先にあたる人です。

 

とにかく、やたらに大きくて華美で派手なお城なんですが、彫り物かと思ってよ〜く見ると壁紙だったりして、見た目の豪華さを優先させている城の印象を受けました。代々の公爵が各自の好みで収集した物が、ごった混ぜに陳列されています。借りた案内用のテープを聞いても、どの部屋の何の説明をしているのかが、今ひとつはっきりせず、なんだかよくわからぬうちに城見学を終えました。確実にわかったのは、映画のヒロインになった公爵夫人、ジョージアナのちょっと憂いをただよわせた面影の肖像画でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーラ・ナイトレイ扮する公爵夫人ジョージアナ(Google画像からの引用)

 

 

 

 

 

5代目公爵夫人ジョージアナ・スペンサー

 

 

「Highclere Castle」を訪れるBBCファンとも違う、一般の見物人が沢山押しかける超有名なお城の割には、管理が雑な印象を受けてしまいました。

 

 

 

 

 

 

               

                豪華絢爛なChatsworth城の内部 

 

 

「高慢と偏見」の原作にはMr.ダーシーの館「Pemberley House」は、「派手でなく、不必要に上品ぶってもいず、壮麗すぎもせず、真にエレガントな館」って、描写されているわけですから、2005年にキーラ・ナアイトレイ主演の映画版「高慢と偏見」で、「Chatsworth」を「Pemberley」として撮影した監督のセンスはどうなんでしょうね? だから、あの映画の出来は悪かったな〜と、変に納得してしまいました。

 

次に訪れた城は「Haddon Hall」。12世紀から17世紀までは要塞として使われていました。その後、無人化し、1920年代に城主の9代目ラットランド公爵夫妻が城を修復し、今は11代目ラットランド公爵所有の城です。実際には公爵一家は住んでいません。

 

この城は「今も現存する最もロマンチックな中世の城」と呼ばれているだけあって、様々な映画やテレビドラマの撮影に使われています。

例えば、1998年、ケイト・ブランシェットがエリザベス1世役でゴールデン・グローブ賞を取った映画「エリザベス」、2008年のアンとメアリーのブーリン姉妹を描いた「ブーリン家の姉妹」や1987年の「プリンセス・ブライド」等です。でも、この「Haddon Hall」はなんと言っても「ジェーン・エア」のMr. ロチェスターの館「Thornfield」としての印象が一番強いかと思います。なにしろ、3本の「ジェーン・エア」がこの城で撮影されているのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 Wye川からのHaddon Hall

  2006年BBC版「ジェーン・エア」(Google画像からの引用)

 

 

 

Wye川の橋のあたりから、城が見え始めました。午後遅く、しかも曇りの日だったせいか、なんとなく、陰鬱な「Thornfield」のイメージと重なります。

 

一緒に歩いていた娘が、「あ〜!」と声をあげて、突然、城の外に広がる牧草地にぽつんとたっている大きな樹の写真を撮りました。「なんなの、あの樹?」と尋ねると、ロチェスターがあの樹の「近く」でジェーン・エアに愛を告白した場所だと言うのです。私の記憶では大きな樹の「下」だったような気がするんですが、娘にとっての「ジェーン・エア」は彼女が大ファンであるマイケル・ファスベンダーがロチェスターを演じた2011年の映画版で、私にとっての「ジェーン・エア」は2006年版のBBC版なんです。ジェーン役はどうでもよく、誰がロチェスター役だったかで、母娘、それぞれに好きなバージョンの「ジェーン・エア」があります。

 

 

私の好きなロチェスターはBBC版            娘の好きな映画版のロチェスター

           (上記の写真はGoogle 画像からの引用)

 

城内に足を踏み入れると、映像で見慣れた石畳が広がっています。そうそう、この石畳をジェーンとロチェスターは歩いていたんだよね〜と、シーンが思わず浮かんできます。ロチェスターが館に招待したゲスト達と華やかな時間を過ごした大広間には「ジェーン・エア」で使われた衣装が飾られ、ドラマのイメージと重なります。

 

        ロチェスターの館「Thornfield」のイメージにぴったりの「Haddon Hall」

 

 

このお城には大きくないけれど、素晴らしい庭園があるんです。2006年版「ジェーン・エア」でも、ロチェスターが後見人となっている少女アデール、家庭教師のジェーンが陽のあたる美しい庭で勉強中、いつもは気難しいロチェスターが珍しく姿を現し、3人でしばし楽しい一時を過ごすのです。

 

 

 

 

 

 

 

        ジェーン・エアの衣装が展示されているホールと要塞だったとは思えない優しい庭園

 

Wye川を見下ろせるエリザベス朝様式のテラス式の庭園を見た時には嬉しくなってしまいました。「Haddon Hall」は「Thornfield」のイメージにそっくりの城。ロケ地を見つける人はさすがにプロの目を持っています。

 

あれ〜!、ロチェスターが狂人の奥さんを隠して閉じ込めていたタワーはどこだったんだろう?とにかく、なんの説明も無いお城なので、どうも見落としてしまったようです。残念!

 

 

1995年のBBC版、コリン・ファースがMr. ダーシーを演じた「高慢と偏見」が一番好きな私は、「Sudbury Hall」訪問をとても楽しみにしていました。

 

ドラマの中のMr. ダーシーの館「Pemberley House」は、実際には二つの館を組み合わせた映像上の創作の館なんです。

 

エリザベスが馬車から初めてダーシーの館を見て、そのエレガントさに驚き、求婚を拒絶したことをちょっぴり悔やませるほど素晴らしいドラマの中の館、「Pemberley」の「外観」は、「Peak District」の北の端、Cheshire地方にある「Lyme Hall and Park」で撮影がされました。

 

そして、館の「内部」はここDerbyshireのSudburyにある「Sudbury Hall」で撮影されました。残念ながら、この旅ではCheshireまで足を伸ばす時間が無く、「Pemberley House」の「内部」だけを見ることになりました。

 

 

 

 

 

 

 

Pemberleyの外観はLyme Hall   (Google 画像引用)                                         

                               Pemberleyの室内はSudbury Hall

 

 

 

「Sudbury Hall」は17世紀に建てられた赤レンガ造りの館で、今はNational Trustが管理しています。ドラマとは全然違う外観に違和感を覚えつつ、館の内部に足を踏み入れると、がら〜んとしています。楽しみにしていただけに軽い失望感を感じながら、館の各部屋を歩き回るうちに、何か記憶にあるような部屋に入り込みました。Mr. ダーシーの書斎として撮影された部屋です。今も似たような机が置かれています。いくつかの部屋を通り過ぎ、広い部屋に入った途端、「あっ、この部屋はミュージック・ルームに使われた部屋だ!」とドラマのシーンをはっきりと思い出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

       Mr. ダーシーの書斎の撮影場所              ミュージックルームとしての撮影場所

 

エレザベスはこの部屋から広大なパークを眺め、「もしかしたら、この館の女主人だったかも……」と、小さくつぶやいた窓もあります。今はピアノも家具も無く殺風景ですが、白いカラーで統一され、壁や天井を飾るレリーフが部屋に優雅さを与えています。「確か、エリザベスはこの部屋の隣のホールから階段を上がっていったはず…..」と思い出し、反対のドアの方を見ると、いや〜、ありましたね、階段が。このホールの壁の色が柔らかいクリーム色だったのが、DVDを見た時、とても印象に残っていましたが、そのクリーム色は今も変わっていませんでした。

 

エリザベスが一族の肖像画に混じって、柔和な顔つきのダーシーの肖像画を見て、これまた意外に思うシーンが撮影されたLong Gallery。この壮麗な長い廊下には今もたくさんの肖像画が飾られていて、昔はさぞかし立派な館であったことを彷彿させる場所でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

   BBCドラマのLong Gallery シーン(左)(Google 画像引用)と実際のLong Gallery(右)

 

 

館の内部を見学し終わったエリザベスが、これまた素晴らしいパークを歩いていて、予定より早めに館に戻ったダーシーに遭遇し、お互いにびっくり仰天する有名なシーンがドラマにはあるんですが、このシーンはCheshire地方の「Lyme Hall and Park」で撮影された為、二人が再会する運命的瞬間に居合わせたような気分は、残念ながらこの旅では味わえませんでした。

 

小説の舞台の撮影地にまで細かくこだわって製作された良質のTVドラマや映画は、原作を魔術的に視覚化し、単に小説を読むよりも、ストーリーを何倍も面白くさせるパワーがあります。その点、ハリウッド映画よりも原作に忠実なドラマが製作されることの多いBBCドラマは、私にとっては最高の「英国文学入門ガイド」になってくれました。                 (スナイダー純子)

 

 

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