マンハッタンのリトル・ジャパンーEast Village (その3)

今度は隣のE10丁目を逆に1番街から2番街に向かって歩いてみた。

 

ある、ある、ある、日本語の看板が。E9丁目にある「おた福」と同じ、真っ赤な店構えの「しゃぶ辰」とラーメンの「来来軒」。さらに隣合って日本風カレーのその名も「Curry-ya」が3軒並んでいる。ここEast VillageのE6丁目は、昔からインド料理レストラン街として知られているが、「Curry-ya」の日本式カレーはアメリカ人にどう受け入れられているのだろうか。興味あるところだ。

 

 

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「カレー屋」の入り口

 

 

それにしても、蕎麦屋の名前が「Sobaya」、カレー屋が「Curry-ya」だから非常に短刀直入。そういえば、昔、コロンビア大学のすぐ傍にあった学食系の日本食を食べさせる店の名前が「Daigaku」だった。それも海外だからのネーミングか?

 

歩き疲れたし、ランチタイムでお腹も空いてきた。カレー?ラーメン?と迷った挙げ句「来来軒」でラーメンを食べることにする。中は日本のどこにでもあるような典型的なラーメン屋さん。日本人ウエイトレスも一人いたが、見習い中のヒスパニックの女の子が注文をとりにきてくれた。

隣の席のゲイ・カップルの黒人男性二人は、枝豆を食べながらコーラを飲み、セットだとついてくる小さめの肉まんとラーメンを食べながら、お喋りに夢中。日本のラーメン屋ではラーメンを食べ終わったら、さっと席を立つのが一般的だが、アメリカのラーメン屋ではお喋りにも興じることが出来る場所のようだ。二人を横目でチラチラ見ながら、私は醤油ラーメン。娘はなんと麻婆ラーメンを注文した。

出て来たラーメンは写真の如く、立派な正当派醤油ラーメン。シナチク、なると、ほうれん草、厚めのチャーシュー、アメリカの薄い黄色の黄身の卵じゃなくて、日本風の黄金色の黄身の茹で卵。この卵の黄身の色で、本場に近い味のラーメンを出そうとしている意気込みを感じましたね。それに大きな海苔。昔見た、映画「たんぽぽ」で、すぐにラーメンの汁を飲まずにまず海苔を汁に浸す……だったか、ラーメン通がラーメンの正しい(?)食べ方のうんちくを傾けていたシーンを思い出してしまったほど、大型の海苔だった。

 

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醤油ラーメンは本格的           麻婆ラーメン

 

 

IMG_2229麻婆ラーメンの方も娘は大いに気に入ったようだった。カウンターの中で手際よくラーメンを作っているのはハンサムなお兄さん。遠目には日本人ぽかったけれど、話を聞いているとこの人もヒスパニック系。やはりここはアメリカだった。

 

 

「来来軒の店内」

 

 

ラーメンを食べてお腹が一杯だったけれど、この近くにデザート・バーのはしりと言われた「チカリシャス」があるはずなので探してみる。

 

4年ほど前だろうか。New York Timesで日本人パテイシェが始めたデザート・バーなるものがEast Villageに開店したとの記事を読み、わざわざ出かけて行ったことがあった。日本風の繊細なケーキやデザートが食べられると書いてあったからだ。薄汚い通りを歩き周り、ようやく見つけた店はカウンター席と小さな二人掛けのテーブルが5つほどのこじんまりとした店だった。カウンター内では店名にもなっているチカさんが黙々とデザートを作り、愛想の良い黒人男性がサービスをしていた。その人がチカさんのご主人だと後で知った。

デザート・バーなのでデザートだけがコースででてくる。どれも日本的に繊細な作り方で、アメリカ式の大きくて甘すぎるパイやケーキに比べると芸術的とも言えるデザートだった。狭い店内は若いアメリカ人女性で一杯。でも、一緒に付き合ってくれた主人には、美味しいけれどもあまりの量の少なさと、デザートとは言えない値段にちょっと驚いたようだった。結局、私たちはここのリピーターにはならなかった。

店は確か3時過ぎの開店だったから、今回は食べる機会は無いかもしれない。でも、デザート好きの娘に場所だけは教えたいと思い、「チカリシャス」まで行ってみた。昔見た看板は今も掛かっているけれど、開店準備中でもなさそうに店は閉まっている。チカさんが東京に店を出したと、雑誌で読んだことがあったので、こちらの店は閉めてしまったのかと思いつつ、何気なく辺りを見回すと、道の反対側に「Desert Club Chikakicious」を見つけ、そちらに入ってみる。

 

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あれ!ここはどこにでもあるようなテイクアウトの店だ。座れる簡単な席もあるけれど、それにしても何と殺風景な店だろう。甘いケーキを売る店が雇うとは到底思えないような愛想の悪い女の子に、反対側の「Chikalicious」はどうなっているのかと聞くと、週2日だけの開店だとか。

 

 

デザート・バーの「Chikalicious」で以前に食べたケーキとは似ても似つかないアメリカ式ケーキでがっかりしたが、娘はアップル・クランブル・アラモード、私はバナナ・プデイングとコーヒーを頼む。プラスチックのカップにドボッと入ったデザートが出てきた。見てくれも何もあったもんではない。ちょっと甘過ぎる上に量の多さにうんざり。半分以上残してしまった。おまけに注文したコーヒーを違うものが出て来たし…..チカさん、East Villageの「Chikalicious」は一体どうなってるんだ!

 

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左:アップル・クランブル・アラモード

上:バナナ・プデイング

 

 

 

後で東京の「Chikalicious」のホームページを見た。表参道に開店した「Chikalicious」はEast Villageからは想像も出来ないほどエレガントな店だった。それにしてもニューヨークでは日本風のデリケートなケーキやデザートが売り物だったのに、東京ではニューヨーク・スタイルが売り物になっているのには笑ってしまった。これじゃあ、East Village店に力が入らなくなるのも無理もないか。

 

JETRO(日本貿易振興機構)のデータによると、2010年には全米で1万4千軒以上の日本食レストランがあり、10年前に比べると2倍強になっているのだそうだ。ニューヨーク州には全米の1割にあたる1,439軒の日本食レストランがある。数の上ではカルフォルニア州が全米一位らしいが、ロサンゼルスに比べると、ニューヨーク市内で人気のある日本食レストランでは、アメリカ人向けの日本食でない、より日本の味に近い料理を提供している傾向が強いそうだ。特に最近では、ラーメン、蕎麦、炉端焼き、焼き鳥屋とか、本場の味に近い料理を提供する専門店が増えているのがニューヨークの特徴らしい。まさにEast Villageがその傾向の最前線といえようか。

 

 

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八木さんの店の一つ「炉端や」。店内はアメリカ人客で満員。

 

こういう流れを生み出した仕掛人がボン・八木(秀峰)さんだと言われている。今回のブログで紹介した「しゃぶ辰」「蕎麦屋」「炉端や」「来来軒」「カレー屋」「おた福」「茶庵」「波崎」に「酒場でしべる」と、East Villageで名だたる日本食レストランのオーナーだ。日本生まれの64歳。フィラデルフィアで皿洗いからスタートした苦労人だ。高級日本レストラン「Nobu」の松久信幸や鉄人シェフで有名になった「Morimoto」の森本正治と違い、ほとんどマスコミには登場しない人ではあるが、長年に渡り、本物の日本の味をアメリカ人に紹介し続けていることで、ニューヨークのレストラン業界では「East Villageの日本大使」と呼ばれているらしい。これからはEast Villageばかりでなく、マンハッタン全域に、本場の日本食を食べさせる店がどんどん増えてくることだろう。なんとも楽しみだ。

(スナイダー純子)

 

 

 

3 Comments

  1. YUKO

    Nobuは東京に店を出したとき、取材に行ったことがあります。今でも繁盛してるのかな? ちょっと懐かしいような気がする。それにしても、ちゃんとした日本食を伝えてもらうことが大切ですよね。

    1. junko

      Yukoさん、私も最近は「Nobu」に行っていないな〜。出来た当時は何度か行ったんです。でも予約をとらない「Neighborhood Nobu」に開店前に行ってしばらく並んでいたのに、ちょうど私の2人分前くらいで一杯になってしまったことがあるんです。また、2時間近くも待つ気になれず、腹は立つやらで、それっきり「Nobu」にも行かなくなりました。もう何年か前ですが、マンハッタンのミッドタウンの57丁目に「Nobu 57」が開店したんで行ってみましたが、美味しくなかったですね。もともと「Nobu」は南米風フージョン和風だったんじゃないかしら?開店したての頃はそれでも珍しかったけれど、今は他に美味しいお店、たくさんありますからね。「Morimoto」も最初に店を出したフイラデルフィアの店で食べたことがありますけど、あれはアメリカ人向けのなんとも言えない変な和風?料理でしたね。マンハッタンの店は行ったことがないからしりませんが。日本の「Nobu」が今も大繁盛していたら驚きです。だって、日本にはもっと美味しい店が無名でもたくさんありますからね。

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