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私、お葬式買っちゃいました①

  • 2019/6/21

今年還暦を迎えるのを機に、お葬式を買った。

人に話すと「気が早い」と笑われるが、そういう人も大抵は生命保険に入り、ガンや先進医療に対応しようと備えている。確かにガンは今や国民の1/2がかかるという病気(かくいう私も経験者)だ。でも、それって残りの1/2の人はガンにならないという話でもある。

対して人生は致死率100%。とりあえず古代から21世紀の現代まで死ななかった人はいないのだから、お葬式は「人生の絶対必要経費」だと思う。

「葬式とか何もしない。骨はなつかしい海に撒いてもらえばいいわ」

と言った友人がいた。でも海洋散骨は骨を「遺骨と分からないパウダー状」にしなくてはならないから、「火葬」だけでも葬式は要るのだ。

「葬式」というとお通夜とか読経とか、「会葬」部分を想像する人が多いと思う。

でも義父母を送った経験から言うと、お葬式はもっと前、病院から始まる(病院で亡くなる場合)。患者が亡くなったら、病院はもうそこで職務終了。「患者様のご家族」はいきなり「遺族」という立場に変わって、遺体を連れ帰らなければならない。
落語の「らくだ」みたいに遺体を背負って帰るわけにはいかないし、もちろんタクシーは乗せてくれないから、遺体を寝かせたまま移送できる寝台車を手配することになる。それから死亡届に火葬場の手配…、大切な家族が亡くなった瞬間からいきなり「お葬式進行」に飲み込まれてゆくのは、親族を亡くしたことのある人なら経験があると思う。

 私は義父母の葬式を経験して、しみじみ「お義母さんがお葬式を買っておいてくれて良かった」と思った。姑はさっぱりした合理的な性格で、早くから葬儀社で自分と義父の分の葬儀プランの積立をしていた。

「いざって時はコレでやってくれりゃ良いから! 手間を掛けるけどよろしく頼むわ」

 その時は義母もまったく元気で「何を縁起でもない」と笑ったものだけれど、「いざという時」が来た時、葬儀社に連絡するだけでいろいろなことが進行して行ったので、しみじみ「お義母さんってホント凄ぇな」と感心してしまった。そしてその時、自分も早めにお葬式を買っておこうと決めた。自分が「これ位でいい」と思うお葬式を買っておけば、送る家族もこれが故人の意志だと納得できる。

ちなみに葬式にどんな形式があるかというと、以下の通り。

「一般葬」というのが従来型というか、訃報を回して通夜・告別式を行うお葬式。

「家族葬」は、内輪だけで行うお葬式。「家族葬」といっても親しい友達や知人も加わっていいので「一般葬」と「家族葬」の違いは、簡単に言うと何人でやるかだけの差でしかない。

「直葬」は、遺体を火葬場で焼くだけの葬儀。「何もいらん、海に撒いてくれ」の友人も、散骨はともかくここまでは要ると思う。

「密葬」というのは規模の話ではなく、周囲へ告知せず内輪で行う葬儀。芸能人や政治家などは密葬にして、後日「偲ぶ会」をするケースも多い。

資料を見るとまだ一般葬が半数以上だが、これは全国平均値だからだ。資料データの[関東B]地区だけを見ると「一般葬41.0%、家族葬45.7%」と、すでに家族葬の方が多くなっている。確かにお葬式は疲れる、遺族が高齢ならなおさらだ。儀式はシンプルに済ませて悲しみに沈みたいと思う人が、多くなっているのかもしれない。

お葬式を買っておかないとすごく困るかと言うと、実はそうでもない。

事故死・突然死の多い救急医療機関は、複数の葬儀社が当番制で担当して急な葬儀に対応するシステムを取っている所も多い。だから事前に買っておかなくても、葬儀自体は出来る。
しかしそうすると遺族は、悲しみの真最中で故人をどんな風に送ればいいか決めなくてはいけないのだ。祭壇はどれに、御棺はどれにしますか? 霊柩車は〇〇のタイプがあります…。

 私の“may be遺族”は夫と息子だ。葬儀は家族だけでごく簡素にやってくれればいいし、家族だけだから祭壇もシンプル&コンパクトで十分。(どうせ自分は見ないもん)要らん金は使わず旅行にでも行って、「あそこへ行きたいここへ行きたいと言う割に出不精だったよな」なんて、温泉に浸かって愛しい妻&優しかった母(と自分で言う)を偲んでいただければもう十分なのだ。

 でもね、自分のことだから「これで十分」と言えるけど、自分以外の葬式を「これで十分」とは決めにくいものだ。だから自分で買っておこう!と思っていた矢先に、義父母の葬儀をお願いした「くらしの友」の営業さんから電話があった。こういうのを「飛んで火に入る夏の虫」、違うな「渡りに船」と申します。

かくて私は、お葬式ショッピングをすることになったのである。

私、お葬式買っちゃいました②へつづく)

[奥岡 伸子]

取材協力:株式会社くらしの友

6 Comments

  1. tomoko

    奥岡さんへ
    「墓を買う」という話はよく聞きますが、「お葬式を買う」というのは聞いたことがありません。なので興味津々。買ったあと、何十年もたったらその時の物価で高くなったりしないのでしょうか?
    私も実両親、義両親を見送りましたが、住んでいた家などの処理を含め、人間は人に迷惑をかけずに死ぬことはできないんだなあ、と思いました。なので、ガンが余命宣告されるというので、死ぬまで時間があり、会いたい人にも会って自身の荷物の整理などもできることから「世界で一番幸せな病気」と言われるのもわかる気がしています。死因1位はガンだと思いますが、残りは老衰か脳出血や心筋梗塞などの突然死ですものね。続きが楽しみです。

    1. nobuko

      tomokoさん、読んでくださってありがとうございます!

      >買ったあと、何十年もたったらその時の物価で高くなったりしないのでしょうか?

      それは私も思いました! それから振袖の「ハレノヒ」みたいに葬儀社が倒産したら?とか。その辺は失礼承知で葬儀社の営業さんに聞きました。
      次回ご案内したいと思いますから、また読んでください。
      お葬式を買っておいた義母はガンで余命宣告され、最後は緩和ケア病棟で穏やかに逝きました。
      心筋梗塞で突然死、数年の長期療養の末と、親や義両親をいろいろな形で送りましたが、
      ガンで逝くのは悪くない(緩和ケアがちゃんと効けば)と本当に思います。

  2. YUKO

    実父を送ったときのことを思い出しました。肺がんで、夜中に入院先で亡くなったのですが、その瞬間まで、亡くなったときに何をするべきか、まったく考えていなかったなぁ〜。
    病院で葬儀社のリストを渡され、そのなかから適当に選んで電話したら、瞬く間に係りの人がやってきて・・・。あとは、どのプランにするか選ぶ作業でしたね。
    うちの父は「何もいらん、海に撒いてくれ」のタイプだったので、大した手間はかからなかったけど、送る側としては後悔することも若干ありました。
    お葬式。伊丹十三の映画を思い出しますが、お墓も葬式の形も、これからどんどん変わっていくのかもしれません。
    続きを待っています。

    1. nobuko

      YUKOさんいらっしゃいませ~。読んでくれてありがとうございます。
      >お墓も葬式の形も、これからどんどん変わっていくのかもしれません。
      そうだと思います。
      少子化超高齢化の日本、後の者に迷惑かけられないと思う人もいるし、
      そもそも後の者がいないという人も多くなっています。
      「何も要らん、海に撒いてくれ」派も今後増えるんじゃないかな。
      でも調べたら、海に撒くのも結構お金がかかります。

  3. ceri

    お義母さま、カッコいいです。
    父1人、母1人、子1人の我が家、「出来るだけ迷惑を掛けたくない」と切望していますが
    具体的なことは妄想だけで何一つしていません。
    どんな季節に旅立つのか全くわかりませんが、その時が来たら粛々と歯車が動き出すように
    私の最期のミッションが始まるなんて、ちょっと素敵。
    幽体離脱って言うの?もう、現世で私の出来ることはなくなっているんですよね。
    その時に後悔しないようにしておかなくては!
    つづきを楽しみにしています。

    1. nobuko

      ceriさま、読んでくれてありがとう。
      はい、義母は青竹真っ二つの、合理的な方でした。
      >もう、現世で私の出来ることはなくなっているんですよね。
      そうなんですよね。「あーあーこうすれば・・」と、その時は言えない。「自分はもう関係ないから、後の人が自由にしてくれれば」で基本いいのですが、残った人がうろたえるのも気の毒だし、張り切って(?)あれもこれもしなきゃ!と頑張る必要もないと思うんですよね。だから、これで十分ラインを用意しようかなと思います。

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