グルメ

屋台風。懐かしの「おでんうどん」

京王線某駅の高架下に、かつて屋台のおでん屋が店を出していた。おでんと日本酒(冷やか、お燗か)以外のメニューはない、その名のとおりのおでん屋。
30代半ばに初めてのれんをくぐり、見たことがなかった屋台の風景と、そこに立ち寄っておでんと酒を楽しむ人たちと話をする面白さにハマった。
10人座るといっぱいになる屋台、本当によく通った。ひとりでふらっと飲みに行く面白さを知ってしまった懐かしい場所。
客も変なのがいなくて(たちの悪いのお客さんはなんとなく淘汰されていた)、宵の口はお鍋を持っておでんを買いに来る人もいた。おつゆが少し薄めの色でおいしかったから、近所の奥さんも買いに来ていたみたい。
屋台のうさんくさいイメージとはちょっと違って、安心して飲めた。
頭の上を通る京王線の音を聞きながら飲む。終電が過ぎると静かになって、線路と並行して走る首都高の車の音が遠くから聞こえてきた。
ああ懐かしいなあ。でもこの屋台、今はもうない。
高架下の自転車置場整備工事が始まって定位置を追い出され、

その後はどうにも屋台を置く場所が見つからなかった。
屋台って、その筋の方が絡んでるんじゃないかって敬遠されたそうだ。

そのころの常連どうしは仲良くなって今でもよく一緒に飲みに行くけど、

おでん屋はなくなっちゃった。
さてこの店、冒頭に書いたように、おでんと日本酒以外のものはない。
でも、裏メニューが一品だけあった。
これはいつも出てくるのではなく、めぐり逢えばラッキー、というものだった。

諸条件がうまくかみ合う必要があるのだ。
◆おでんがみんな売り切れること
◆その段階で、客が何人かいること
◆駅の反対側にあるコンビニ、または大通りの24時間スーパーまで行く元気のある人が客の中にいること
この条件に遭遇するのがけっこう難しい。屋台のおでんって、そういつも売り切れるものではない。午前2時とか3時の夜更けかもしれないし、おみやげを買う人が多いと意外なほど早く売り切れたり。

売り切れない日は、作ることができない。
私が15年ほど通っていて、巡り合えたのは3回くらいだったかな。
うまく遭遇した日を思い出してみると…

おでん種がほとんどなくなるころ、「うどん、やろうよ」と誰からともなく声が上がる。
「じゃ、俺が行ってきますよ」と誰かがコンビニに向かう。
買ってくるものはうどん玉、長ネギ、バター。
ここからは店のおっちゃんの出番。
おでんが入っていたホウロウの容れ物(バット)から、まず下に敷いてあるスノコを取りだし、残ったつゆの中にうどん玉を投入。
そこに居合わせた幸運な客たちはお酒の続きを飲みながら、うどんがグツグツしてくるのを眺めている。
やがて食べごろ到来、おっちゃんが片手にネギ、片手に包丁を持ち、
鍋の上にかざしてゴボウのささがきの要領で長ネギをシャシャシャッとうどんに振りかける。
ほら、おでん屋にはまな板がないんです。だからシャシャシャッとするしかない。
そして、塩で味を調える。
おでんのおつゆって、種が入っていた分だいぶ甘みが出ているのが、この塩でキュッと味が締まる。

ぐつぐつ
「さ、もういいだろ」と言われて客が順番に自分のお皿を出すと、おっちゃんが皿にバターをひとかけ、その上に熱いうどんをよそってくれる。
ネギとバターの香りが、酔っぱらいの食欲をそそるんだ。
ここに好みで黒七味をパラリと振るのがまたいい…
静かな夜更けに、つるつるという音が響く。
サービスうどんをふるまわれると店は終わり、客もおっちゃんもそれぞれ帰途につくわけだ。

ああ懐かしい、食べたいなあ!ということで、
家でおでんを作ると、うどん玉を用意して再現する。
これはもうわが家の定番で、おでんを作ると「3日目のうどん」が楽しみなんだ。

 

投入 ねぎばた
作り方は屋台直伝。ただ、この写真では万能ねぎを使っているが屋台ではこれは邪道。万能ねぎは腰がないから、ササガキができないのだ。わが家で作るときはまな板があるので、ネギは普通に小口に刻んで入れる。

できた

家のおでんは鍋の底に里芋のとろけたのとか沈んでおつゆが濁りがちなので、一度鍋からおつゆを他の容れものに移して余計なゴミを取ってしまうと、
おつゆがきれいに仕上がって見た目がよい。

シンプルイズベスト、飲んだ後の締めに最高。

おでんの日には、うどんも買いましょう。

 

♪おでん好きのタムラ

 

4 Comments

  1. nobuko

    ぐあー! 今日の献立決まっちゃったけど、おでんに変えてこれが食べたい。

    というか、タムラさんの通ったおでんの屋台に行ってみたい。羨ましくてよだれ涙が出ます。

    美味しそうだなあ・・バターと長ネギというのが凄い。
    今度おでんをした日には、絶対やろう。

    私が行ったことのあるおでん屋台は、吉祥寺の伊勢丹の前に出る屋台で、牛スジという具を初めて知ったのはココでした。

    吉祥寺行かなくなったし、伊勢丹は閉まっちゃったし、おでん屋台ももうないだろうな。

    あー本当におでん食べたくなってきました。

  2. タムラ

    nobukoさんこんにちは。
    いい屋台だったんですよー。いい里芋入れてて、思い出すともう……
    ところで吉祥寺、伊勢丹はなくなりましたけどおでん屋さんはまだありますよ。今年の冬も見かけました(吉祥寺在住なもので^^)。
    ちなみに都心でまだ見かけるおでん屋台は九段下駅近く、ここは立ち飲みでお母さんが一人でやってます。近くへ行かれたらぜひどうぞ。
    おでんうどん、いいですよ~まずは、いっぺんお試しください!

  3. nobuko

    ちょろ・・・

    >吉祥寺、伊勢丹はなくなりましたけどおでん屋さんはまだありますよ。

    本当ですか!

    それは、嬉しいなあ~。元気でやっているんだー。

    脳裏にある吉祥寺の街角に、おでん屋台の灯がともりましたよ。嬉しい。 九段下駅、近くに行ったら思い出してみます。ありがとうございます。

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