グルメ

失楽園鍋

――凛子は音もなく立ち上がると明かりをつけ、キッチンで最後の食事の支度をはじめる。

あらかじめ材料を用意していたらしく、茸とベーコンのサラダに、鴨とクレソンの小鍋をあたためて食卓テーブルに並べる。

 

「あのワインをあけよう」

久木は昨夜、ホテルで分けてもらったシャトーマルゴーの栓を抜き、ゆっくりとふたつのグラスに注ぐ。――

 

渡辺淳一郎の小説「失楽園」の一節である。

出版社で窓際族になった53歳のオトコ(久木)が、37歳の女流書道家(凛子)と恋に落ち、ダブル不倫。あげくにHしながら心中してしまう、というお話。

新聞連載時から「失楽園ブーム」とか話題になり、役所広司と黒木瞳主演で映画化もされた。

 

文庫本になったときに、読んだけどストーリーには感情移入できなかった。

しかし、ハートを鷲掴みにされたのが、先のくだり。というか、ここしか覚えていない。

久木と凛子が、軽井沢の別荘で心中をはかる直前の、食事のシーン。

 

鴨とクレソンの鍋

赤ワイン

 

おいしそう~。

 

以来、わが家でも何度となく、この鍋を楽しんでいる。

小鍋じゃなくて大鍋だけどね。

色恋よりも食欲!

世の中にはこういう人が多いらしく、この鍋には「失楽園鍋」という名前がついているようだ。

 

「失楽園」のなかに、レシピは出ていないので、自分で好きなように作っている。

クレソンのみで、他の具材を入れないほうが味がスッキリするけど、クレソンがめっちゃ高い今はセリで代用している。

 

オシャレ度には欠けるが、セリでもおいしい。

 

だってスーパーで売っているクレソンって、生で食べることを想定しているんだと思うんだけど、束が小さい。ひと束くらい鍋に入れても、クタッってなって、全然足りないんだもん。安売りしてるときじゃないと、鴨肉よりクレソンの方が高くついてしまう。

(そういえば由布院温泉の川には、クレソンがいっぱい自生していた。クレソン取り放題。うらやましい~)

 

鴨肉は玉川高島屋の中にある鶏肉専門店「鳥芳」で、合鴨をしゃぶしゃぶ用に薄くスライスしたものを使っている。

鴨なんばんとかに入っている厚切りのものより、私は薄切りのほうが好きだ。

だしも、同店で売っている「鴨のつゆ」。

でも、昆布だしだけでも、合鴨から出汁がでるので問題ない。

そして同店で売っている合鴨のつみれも入れる。

つみれを入れることで、出汁が濃くなる。

 

合鴨もつみれ、合鴨のしゃぶしゃぶ用肉を用意。野菜はクレソンのみが理想的だが、クレソンが高いときはセリで代用。今回は葉野菜高騰につき、エノキダケ、椎茸などでボリュームアップした。

合鴨もつみれ、合鴨のしゃぶしゃぶ用肉を用意。野菜はクレソンのみが理想的だが、クレソンが高いときはセリで代用。

 

 

 

鴨鍋2

 

夕べは葉野菜高騰につき、エノキダケ、椎茸などでボリュームアップ。

ここらあたりが恋愛体質ではかなげな「凛子」と生活感たっぷりのおばさんとの差かも・・・(悲)。

 

もちろん赤ワインは必須アイテム。

 

きっと小説の中に出てくる小鍋は、こんな風な和風の出汁ではなくて、ブイヨンか何か、洋風なのかもしれないけど、お醤油が入った和風出汁でも、赤ワインにバッチリ合います。

でも、こんなの食べたら生きる気力がどんどん湧いてきて、心中しようなんて思わないけどね。

 

(土井ゆう子)

 

 

2 Comments

  1. sanae

    「クレソン高いからセリじゃだめ?」と思って読み進んで、セリが出てきて安心しました^^失楽園鍋のネーミングが秀逸ですね。

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