夫婦・家族

3「縁切り宣言されて」

両親が70代を迎え、年金生活に入る。

家を持たない両親のために、兄妹が家探しをしていたとき、父から急な呼び出しがかかった。

新宿のふぐやに集まった私と兄に、父が言った。

兄嫁のキヨが、母が一人で居る時、家に来て

「うちはこれから家を建てますが、そこにあなた方の居住スペースを設けるつもりはありません。今後、モトキさん(兄)が、あなたたちと一緒に住むことはないので、そういう期待はしないでください」と言ったと。


 

「キヨはそんなことを言う人間じゃない」と兄は気色ばんだ。

 

3人の間にしばし沈黙が訪れた。

私は考えていた。

好きでも嫌いでもない、人畜無害だと思っていた兄嫁の突然の行動。でも、本人不在の場所で、言った言わないの議論は無意味だろう。

兄が自分の嫁の肩を持つのは、決して悪いことじゃない。

でもこの展開、いったいどうすりゃいいの、と。

 

が、次の瞬間、兄が

「もう、知らん!  そんな風に思ってるんやったら、今後付き合っていかれへん。親子も何も、みんな縁を切る」と言い放つと席をたち、会計を済ませてサッサッと出ていった。

まだ料理にはほとんど手が付けられていない。

取り残された父も私も、兄のあまりの極端な行動に呆然とするしかなかった。

 

今まで、ずっと、仲良くやってきたのに。

ウチは財産がないから、兄妹間で財産争いする心配もないなぁ~、とよく冗談めかして笑っていたのに、こんなことで亀裂が入るなんて。

冷静に話し合って、誤解をとけば、それで済むことなのに……、

家族なんだから、分かり合えるはずなのに……。

兄はなぜ、それをしないで、簡単に、一方的に「縁を切る」なんて言葉を発することができるんだろう?

「縁を切る  縁を切る  縁を切る」

三文小説にでてきそうな陳腐な言葉が、頭の中でリフレインする。

家へ帰る道すがら、悔しくて泣けてきた。

でも何が悔しいのか、よくわからない。

兄嫁キヨのくだらない言葉に翻弄されて、家族の縁が切れてしまいそうになることなのか。

兄があそこまで怒る理由が、まったく理解できないことなのか。

一方的に「縁を切る」といわれる理不尽に対して、為すすべがないことか。

胸のなかにモヤモヤが大量発生し、涙が次から次にあふれる。

 

後で聞くと、父も泣いたそうだ。

家に帰りつく前、公園のベンチに座って泣いたと。

 

「いや~、昨日はちょっとお酒が入ってたから、変なこと言うたけど、水に流して」

そんな電話が兄から入るかと待っていたが、結局なかった。

 

この後両親は、神奈川県藤沢市にある古い公団住宅に引っ越すことを決めた。

高齢者用にバリアフリーに改装されていたことが選んだポイントだったが、そこは、うちからも、兄の家からも1時間以上かかる場所だった。

(ヤマダヨウコ)
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