夫婦・家族

肺ガン末期の親を見送った顛末9「時計がしゃべりだす」

入院中、食欲のない父に

「何か食べたいものない?」と聞くと、桃が食べたいという。

父は岡山県の生まれ。

「じゃ、岡山の白桃を買ってくるよ」と言うも、近所のスーパーには売っていない。

たまプラーザの東急百貨店地下のフルーツ專門店で、やっと見つけた。

1個1500円という強気の値段に一瞬ひるんだが、病人の命をつなぐフルーツと思い、清水の舞台から飛び降りるつもりで1個買った。

 

病室に備え付けてある冷蔵庫で冷やし、皮をむき、食べやすい大きに切って父に渡す。

「岡山の白桃、買ってきたよ。1個1500円もしたのよ。食べてよね!」とその値打ちと希少性をアピールしつつ、すすめる。

大きな桃なので、1回に食べられるのは半分か1/3個ほどだったが、「おいしい」といって食べてくれた。

包丁でカットできない種のまわりの身は私が食べる。

果汁たっぷりで上品な甘さは、さすが1500円だ。

2~3日に1個ずつ買い、冷蔵庫に桃を切らさないようにした。

 

あるとき、東急デパートまで桃を買いにいく時間がなかったので、他県産の桃をむいて、食べさせたところ

「コレ、岡山の白桃とちゃうなぁ~」と鋭く指摘される。

「なんや、食べもんの味、わからへんって言うてたけど、ちゃんとわかってるやん」と思わず、ツッコミを入れた。。

 

ある日、桃をむく果物ナイフがなくなっていた。

いつも、病室の片隅にある小さなキッチンスペースの棚の上に、果物ナイフを置いておいたのに。

すると看護師の一人が「ちょっといいですか」と声をかけてきて、私を部屋から廊下に出るようにうながした。

その看護師の手に、果実ナイフがあった。

「ヤマダさん、夜あまり眠れないみたいで、ナースコールを何度も押されるんです」

「すみません。ご迷惑おかけしまして」

「いえ、それはいいんですが、『もう死にたい』というような発言もよくありまして…。今朝、窓が少し開いていたり、椅子が動いていたりしたもんですから、病室にナイフなどは置いておかないほうがいいと思いまして、こちらで預からしていただきました」

父の病室は4階にある。飛び降り自殺を図る可能性があるなんて思われているのだろうか。

「そうでしたか。窓は昨日来たとき、うちの夫が多摩川の花火、ここから見えないかな~、とかいって開けてたんですが、そのときちゃんと閉めてなかったんだと思いますけど」

「徘徊があるかもしれません。刃物を病室に置いておくのは、危険ですので、ナイフは毎回、お持ち帰りください」

「わかりました。そうします」

「それから、ヤマダさん、夜中に時計がしゃべり出す、って言われるんですけど、以前にハト時計とか、何かしゃべるような時計をお使いでしたか?」

「ええ~? 時計がしゃべり出すって言うんですか? そんな時計、使ってなかったと思いますが……」

夜中に時計がしゃべりだす、だなんてまるでトイストーリーかナイトミュージアムだ。

 

何度も同じことを言う

もの忘れがひどい

ということは認識していたが、夜中に時計がしゃべり出す、というのは始めて聞いた。

今、父の頭のなかで何が起こっているのだろうか。

この先、どうなっていくのだろうか。

 

(ヤマダヨウコ)

 

 

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