夫婦・家族

わたしたち、もしかして仲良し家族?8 わたしは母の母じゃない

12月
我が家の年末年始は、夫の実家で過ごすのが恒例だ。
子どもの受験等で帰省しなかった年もあるが、結婚してから一度も、わたしの実家で年を越したことはない。

「今年の正月は、佐賀(わたしの実家)に行く?」
言いだしたのは夫だった。
「いいと!? お義父さんは?」
「武んとこ(弟家族)が帰るけん、よかろ」

 

 

義母が3年前に亡くなってから、義父は鹿児島でひとり暮らし。義母は大たい骨を骨折してあっという間に逝ってしまったので、介護はおろか、心の準備をする時間もほとんどなかった。夫の、優しい心遣いに感謝である。
早速わたしは、この嬉しいニュースを母に伝えた。
大晦日に来るけん、みんなで一緒に年越ししよ。お正月の朝、おせちがすんだら鹿児島に行くけん」
「大みそかまでヘルパーさんが来てくれるんよ。お正月は宅配弁当も休みやし
三が日の食事をどうしようかねぇ
母は全然嬉しそうじゃなかった。
大晦日を娘と一緒に過ごせることよりも、ヘルパーさんが来ない日の食事の支度の方が重要らしい。

 

「だって、ごはんがちゃんとしてないと、お父さんの機嫌が悪くなるけん
いかにもわがままな夫に虐げられてるように訴えるが、これは娘の意見を退けて、「かわいそうな母」の言うことをきかせるための罠なのだ。

先月、年賀状の図柄を決める時に

「羊が2匹、元気でおるごたっけん、これにするか」
と、父が珍しく優しいことを言った時は、返事もしなかったくせに。

 

 

「まぁ、いいわ。今日は片付けものを手伝って」
お正月の話はそれで終わり。
実家で過ごす1日は忙しい。

 

母のたんすには、着物が大切にしまわれていた。

「お茶やお花をして、優雅に暮らすつもりやったとに」
「それは、アテが外れたねぇ」
「お母さんのやけど、着らん? これはけいちゃんに似合うやろ」
落ち着いた茶色地に、薄紅色や橙色した花の刺繍が織り込まれた帯は、なんとも魅力的。着物にはとんと興味がなくて、成人式の振り袖以降はご無沙汰だったが、これならつけてみたいかも。
「これは、ちかちゃんに」
黒地に大きな紅い花模様。ちかこの華やかな雰囲気にぴったりだ。
「お母さんが、お棺の中にはいるときはこれで、お父さんはこれ」
ぴしっとのりのかかった、濃紺の一枚。
そういえば、わたしが幼いころ、部屋でくつろぐ父はゆかたに黒い柔らかな帯を締めていた。

「お父さんのもあるんだ」
「そりゃ、用意しとかんばやろ」
「さすが良妻やね」
母はまんざらでもなさそうな顔で微笑んだ。
なんのかんの言いながら、50年も夫婦をやってきたのだ。娘には分からない、絆みたいなものはあるのだろう。

 

 

そして、大みそか。
妹家族も来て賑やかにごはんを食べたあと、母は調子が悪いと早々に自分の部屋に引きこもってしまった。おせちの仕込みをしたり、紅白歌合戦を見ながら母と一緒に過ごしたかったのに。まさか実家の台所で、ひとりで片付けをしながら年を越すことになるなんて。
やはり、母の言うことは絶対なのだ。わたしの希望を通しても、いいことなんて何もない。
この家で甘えたいと思ったわたしは、また甘かったのねと、つくづく感じた2015年の幕開けでした。
(参考)実家で寝正月の夢破れたり → わたしたち、もしかして仲良し家族?4

 

 

3日の夜、やっぱり母が心配で、わたしは鹿児島帰りに実家に寄って夕飯を作ることにした。
母は
「けいちゃん、わたしのお母さんみたいやね」
と喜んでくれたが、冷蔵庫は妹やヘルパーさん(休み中なのに!)が届けてくれた食べ物でぱんぱんだった。どうやら母は、正月の食事が心配だと、あちらこちらで吹聴していたらしい。

 

「食べんかったのを見て、(妹やヘルパーさんが)気を悪くしたらいけんけん」と、それらを山ほど持たされた帰り道、わたしの心も重かった。どうやらわたしが無理をしなくても、父母の暮らしはまわっている。

 

自己満足は実らないし、無理して尽くすと虚しいし。
わたしは母の母じゃない。無償の愛で介護をするのは、本当に難しいことであるよ。

 

 

花村桂子

4 Comments

  1. nobuko

    なるほど、そうですねえ。

    >わたしは母の母じゃない。

    子どもには、無条件で面倒をみることが出来るのに
    逆は・・難しいですよね。

    親に対してはやっぱりどこまでも 子ども意識があるんだろうなあ。

    でも、旦那様から実家での年越しを勧めてくれるなんて優しい(^^)
    妹さんとの関係も良くて、読んでいてそこに安心します。

    うちは義母が亡くなった後、義父が1年半程独り暮らしをしたのですが、いつ行っても義父は食事の心配を口にして(冷蔵庫は義妹の運び込んだ食べ物がいっぱい)どうすればいいのと思ったのを思い出しました。その義父も亡くなってしまったなあ。

  2. けい

    nobukoさん

    コメントありがとうございます

    >どうすればいいのと思ったのを思い出しました
    きっと
    「応えてあげたい」と思ってらっしゃったんですね

    うちの母も心配ばかりしてますが
    本人は何の気なしに言ってるんだろうなぁ

  3. りーたん

    >うちの母も心配ばかりしてますが
    本人は何の気なしに言ってるんだろうなぁ

    親の何気ない言葉も、子どもって、100%しっかり受け取ってしまうんでしょうね。そして考えすぎる。
    そこが他人との関係と違う点なんでしょうか。。

  4. けい

    りーたんさん
    >親の何気ない言葉も、子どもって、100%しっかり受け取ってしまうんでしょうね。そして考えすぎる。

    まるで思春期の子どものようですね(^_^;)
    って今ごろ気付いたりして
    でもおっしゃる通りそれが親子なのかしら?

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