夫婦・家族

わたしたち、もしかして仲良し家族?6 「かかりつけ医の支援を受けて」

8月、わたしは父母と共に、母のパーキンソン病の主治医である脳神経外科医院を訪れた。

そこはデイケアや入院設備を備えた個人病院。昨年食道がんの手術後、医大を2週間で出された時には、3か月ほど入院させていただいた。これから先は、(積極的治療をしないので)がんの経過観察もお願いすることになる。

 
「医大での放射線治療は効果があったですよ。肺のがんは小さくなっとります。他に転移もなかし、ほぼ寛解と言ってもよかくらいです」
40代前半の2代目院長先生は、X線写真を見ながら アンパンマンみたいに丸い顔で にこにこと微笑んだ。
「県病院(ホスピス)の△△先生からも連絡もらいました。痛み止めはこちらでも出せますから、足りらん時は言ってください」
実家からホスピスのある県立病院までは車で15分、かかりつけ医は徒歩5分。近くで対応していただけるのはありがたい。

 

「ホスピスに入ろうかと思ったとですが、まだ早かですかね」
「ホスピスより、旅行でも行かれんですか」
「家のこともしきらんのに旅行とか…ひとりで歩きもきらんし」
と言いながらも、母の表情が和らいだ。

 

「いざってときは、先生のとこに入院させてもらえますか?」
「はい、よかですよ」
ホスピスに入れなかった時の受け入れ先も決まって、ひと安心。

 

 

さらに、病院所属のケアマネージャ氏の尽力で、ホスピスで助言頂いたことのほとんどを、手配していただけた。

介護認定: 要支援3→要介護1へ (後日認定により)
訪問看護士:週2回入浴介助
訪問リハビリ:週2回
ホームペルパー:週3回夕食つくり、週1回掃除 各1時間
レンタル:電動ベッド(継続) 駐車時車いすマーク
リフォーム:玄関・トイレに手すりをつける
宅配弁当:母の昼食、父母の夕食週3回

 

父は洗濯掃除や日々の買物、通院の付添を。
妹は平日の弁当作りと、土日は買物。
わたしは週に1度通って、通院や外出の手伝い。
母が自分の事をできる間は、父母ふたり暮らしの自宅で過ごせそうだ。

 

 
夕方、久しぶりに、実家の台所で母とわたしたち姉妹が顔を揃えた。
「退院おめでとう」
「けいちゃんと、ちかちゃんのおかげよ。ありがとうね」
「お祝いせんばね(しなきゃね)」
「お父さんも食べに行くの好きやしね」と母
「せっかくやし、みんなで行かん?」
「じゃあ、だんなと息子にも(予定を)言わなね」

 
そうして、川上峡名物「鯉のあらい」を食べに行くことになった。
川上峡は佐賀の端っこの山深い山中にあり、初夏は蛍が飛び交う美しい場所である。「鯉のあらい」とは、刺身のこと。細かく砕いた氷と千切りキャベツの上に敷きつめられた半透明の身は、見るからに涼し気。酢みそで頂くと、ぷりぷりの歯ごたえで、とても美味しい。わたしと妹が幼い頃は、夏の帰省のたびに母方の祖母も一緒に通った思い出の場所である。

こいのあらい(刺身)
父母と、わたしと妹、それぞれの夫と子ども。
お正月やお盆に実家で会いはするけれど、全員でおでかけするのは初めてだ。働き盛りの夫たちや、勉強やバイトや(や遊び)で忙しい息子たちもつきあってくれた。

 

父は、娘婿ふたりに加えて、大学生のわたしの息子も一緒にビールを飲んだのに目を丸くして喜んだ。

「やっぱり刺身は飲み込みきらんやったけど、鯉こく(味噌汁)は美味しいねぇ」
「お母さん、元々鯉こくが好きやったやん」
「おれもー」
中学生で反抗期まっただなかの甥っ子は、おばあちゃんっ子。おばあちゃん(母)の好みに何でも賛同するところは、幼い頃のままである。

こいこく(味噌汁)
父は短気な癇癪持ちだし、母は自分の心配ばかりするし。
実家に行くたびに、両方に気を遣ってへとへとになるのだが、この日は夫たちや子どもたちみんなが協力してくれたおかげで、和やかな時を過ごすことができた。
父と母をさりげなく別の車に乗せたり、笑える話題を用意したり。
細かい気遣いの上に成り立っているのは重々承知しているけれど、
両親が機嫌よく一緒にいにいるのを見るのはやっぱり嬉しくて

見せかけの団らんだけど、それでもやっぱり仲良し家族ごっこは楽しかったのでした。

 

花村 桂子

 

10 Comments

  1. yuko

    家から5分のところに、たよりになるお医者さんがいるのは心強いですね。
    見せかけの団欒・・・、
    それでも、かけがえのない、いい時間ですよね。

  2. けい

    yukoさん

    >見せかけの団欒・・・、
    >それでも、かけがえのない、いい時間ですよね。
    ありがとうございます

    見せかけでもけっこう楽しいものです
    ぎすぎすしてるよりよっぽどマシ(^_^;)
    大人のなせる技だと思ったりして

  3. 渡辺里佳

    「大人のなせる技」、ですか。深いです。
    話が変わりますが、けいさん、写真がプロ並みに上手ですね!
    鯉コクのシズル感が素晴らしい~

  4. けい

    渡辺里佳さま

    ほめてくださってありがとうございます (*^m^*)
    でも「シズル感ってなに…?」なワタシ
    一眼レフのおかげです(持ち腐れという話もある)

  5. 渡辺里佳

    あ、鯉のあらいの方でした。
    鯉コクも素晴らしいけど、どちらも美味しそうです!!
    シズル感。改めて問われ、なんだろうと考えてしまいました(笑)
    臨場感とか、瑞々しさとか…。 これって広告用語なのかな?

  6. nobuko

    ご近所のアンパンマン先生がグッジョブですね。

    こういう先生が付いていてくれるなら安心です。

    >見せかけの団らんだけど、

    いえいえ、「見せかけ」ではなく
    つかのまでも、その時はちゃんと団らんだったと思います。
    鯉の洗い、美味しいですよねえ・・・じるる

  7. けい

    nobukoさん

    >つかのまでも、その時はちゃんと団らんだったと思います。
    ありがとうございます (*・ω・*)
    オトナはこーゆー時間を繋げて生きて行くものですよね

    鯉、これからおいしいですよー

  8. kaoru

    海なし県だからだと思うけど
    私の実家の方でも(栃木)鯉こくや鯉の洗いを食べます。
    家族って微妙だけど、みんな揃ってお出かけできるって幸せですよね。

  9. けい

    kaoruさん
    栃木でも食べるんですね
    鯉は生臭くない? なんて聞かれることもありますが
    おいちいですよね ( ̄m ̄* )
    わたしは大好き

    >家族って微妙だけど、みんな揃ってお出かけできるって幸せですよね。
    理想とは違うけど、替えはきかないですね(^_^;) 家族って

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