夫婦・家族

わたしたち、もしかして仲良し家族?4 「介護するのも されるのも ひとりではなかったのです」

母の退院を週明けに控えた土曜日の夜。妹のちかこから、珍しく電話があった。
「ちかちゃん、どうかしたと?」
お父さん、また倒れたと。実家に行ったら、いつもの椅子でぼーっとしとって。すり傷だらけで、目のとこ真っ青にしとるんよー!!!(泣)」

 

父は、1年前にも意識を失っている。
その時は、ちょうど私が居合わせていた。自室のリクライニングシートに座って眠っているかのように見えた父は、大声で呼んでも、ゆすっても、目を閉じたまま動かなくて、仰天したわたしは生まれて初めて救急車を呼んだのだ。
この時は「低血糖」ということで、父は点滴でけろっと回復した。数年前にがんで胃を全摘していたのが、加齢に伴って血糖値の管理が難くなったのだろうということだった。

 

「(お父さん)”なんも覚えとらん”っていうとよ」
「低血糖じゃないと?」
「外でこけて、家まで帰って来たみたいっちゃんね。(帰ってきたみたいなの)」
低血糖なら、処置なしで意識を回復することはない。
「休日当番医には行ったとけど、ちゃんと検査してくださいって。」
幼い頃からお父さん子の妹は、泣きださんばかりに心配していた。
そして、月曜日。わたしは父をかかりつけ医(内科)へ連れていった。
「きゃー!どうしたとですか?」
右目のまわりを真っ青に腫らした父は、馴染みらしい看護婦さんたちにあっという間に取り囲まれた。
「なんか、よう覚えとらんとよ」
「まぁーっ。ガーゼのつけかえば、しようね」
言われるがままに、素直に腕を差し出している。勢いよく倒れたのか、手の甲や肩にも、けっこうな擦り傷ができていた。

 

内科では原因は分からず、紹介状を持たされて脳神経外科へ。
廊下の長椅子に並んで、CTスキャンの順番待ちをしている時に気づいたのだが、
父とふたりで外出するのは、これが生まれて初めてだ。
現役時代の父は仕事と飲みごとに夢中で、娘たちには無関心。たまに家にいる時は、寝ころんでTVを見ていて、母と姉妹が賑やかにしゃべっていると「うるさい!静かにせんか!」と怒鳴る、煙たい存在だったのだ。

 

「お父さんと、ふたりで出かけるって初めてやね」
「そうか? おい(俺)まで、手間掛けるなぁ」
「いやいや」
お前は保険は入っとるとか? がんは、親がなったら子もなるらしいけん、入っとけよ。
父が、わたしを気遣ってくれるなんて!!!
忘れもしない。あれは、20代最後のお正月。よちよち歩きの息子を連れて夫実家で気の張る年末年始を過ごした後、ようやくたどりついた実家で、わたしは熱を出して寝込んでしまった。ちょっとのんびりしようなんて甘いこと考えていたら
「俺にうつるやっか。早く(家に)帰らんか。」と言い放った父が!!!
「今さら何言ってんだか」と思ったものの、やっぱり、ちょっぴり嬉しかった。
結局CTスキャンでも、原因不明。
仕事から飛んで帰ってきた妹とも、久しぶりに顔を合わせた。
「なんも(治療)せんで よかとやろうか?」
「よくはなかろうけど、(原因が)分からんなら、しょうがなかろうもん」
「(大病だって)大騒ぎするのはお母さんやけど、大事(おおごと)になるのはお父さんやねぇ」

 

実はわたしたちは、そんなに仲の良い姉妹ではなかった。
幼い頃から、母の手伝いや用事をいいつけられるのは長女のわたしばかりで「何もしないで許される妹はいいな」と、ずっと思っていた。

「ちかちゃん、びっくりしたろ? あんた お父さん子やったし」

「だってお母さんには、けいちゃんがべったりやったやん」
「あー、確かに」

 

こき使われながらも、子どもの頃のわたしは母が大好きだった。横暴な父から母を守らなくてはと思っていた。妹は、母争奪戦に破れて、しょうがなくお父さん子になったのかもしれない。

が、その後、成人した長女に安心したのか、母は夫の愚痴(=悪口)を垂れ流すようになり…善意の助言はことごとく退けられ…”ただ聞いてくれるだけでいいの”と言われても黙って聞き続けるのは難しく…嫌気がさしたわたしは、だんだん実家から遠ざかっていたのでした。
その間に、妹も結婚して子どもを産んで、実家の隣に家を建てた。
今も正社員で働いて残業も多いのに、料理ができない父に、毎日弁当を差し入れている。
わたしが、自宅にいるときは実家のことをキレイに忘れていられるのは、ちかこのおかげ。

 

「ちかちゃん、お弁当おつかれさま」
「けいちゃんばっかり休ませて、ごめんね」
子どもの頃はけんかばっかりしていた妹だが、今ではこんなに頼りになる。協力できる姉妹がいて、ほんとうによかった。

 

花村 桂子

 


6 Comments

  1. nobuko

    意識を失って倒れるって怖いですね。 

    受け身もなく倒れるから、思いっきりぶつかってしまう。
    打ち所が悪かったら危ないところでしたね。
    まずはご無事で良かった。

    妹さんが実家の隣にいてくれるのは、心強いですねえ。

    私も長姉が家を継いで母と住んでいてくれるので、安心して離れていられます。姉妹って有難い。

    >「ちかちゃん、お弁当おつかれさま」
    >「けいちゃんばっかり休ませて、ごめんね」

    今こう言い合える2人が素敵です。

    家族の事で協力しあえるのは、やっぱり家族ですもん。

  2. けい

    りーたんさん
    >姉妹がいるっていいですね~
    子どもの時からけんかばっかりだったし
    今でも大の仲良し!ってわけじゃないけど
    やっぱり姉妹は頼りになりますね

  3. けい

    nobukoさん
    >受け身もなく倒れるから、思いっきりぶつかってしまう。
    そうなんです
    書いてないけど前から時々倒れてまして、
    それは家の中だったから
    まだよかったんですけどね

    わたしの方はいいのですが
    主人の父がひとり暮らし
    幸い元気ですが、そちらも気になります

  4. kaoru

    先日実家に帰ったら、父の足がおぼつかなくなっていたり
    少し我慢がきかなくなっていたりして、改めて老いを実感しました。
    もう80歳、当然ですよね。温厚な父だっただけに
    これからどうなるのか心配です。近くにいないので何もできませんがせめて弟と情報を共有しつつ、見守っていこうと思います。

  5. けい

    kaoruさん

    >先日実家に帰ったら、父の足がおぼつかなくなっていたり
    >少し我慢がきかなくなっていたりして、改めて老いを実感しました。
    家の中にいると思わないけど、外で見ると
    ビックリするくらい老いてたりしますよね。。。

    わたしも見守るしかないですが
    切ないですねぇ

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