夫婦・家族

「愚痴は流せというけれど」-わたしたち、もしかして仲良し家族?7

10月
母からメールが来た。
「胸の痛みと足が立たない、ひとりでは歩けないと○病院(かかりつけ医)へ行き、レントゲンを撮り、肺の炎症かガンが復活したかということで血液検査に出しました。明日検査結果と紹介状をもらいに行き、ホスピスへ行きます。けいちゃん来てくれるのは無理でしょう?」
(改行がないのも原文ママ)

 

足が立たないとは、尋常じゃない気がする。放射線治療が効いて癌を抑えられたと聞いたのは、8月のことなのに。もう、病巣が広がってきたのだろうか?

 

翌日、仕事を休んで飛んで行くと、母はいつもの手押し車を押しながら歩いて出てきた。
「なんだー、歩けるやん(またダマサレター)
と思ったが、口には出さない。母は、娘の心配心を煽って操作するのが本当に上手。

 

 

まずはかかりつけ医、アンパンマン先生を受診。
「確かに白い影はでてきとりましたが、そーんなに広がっとうわけじゃなかですよ。血液検査はそんなに悪くはなかったです」
「でも、痛かし、足に力が入らんとは何でですか?」
「…食べて体力をつけるしかなかですもんね」

 

 

「いっつも同じことしか言わんっちゃけん、全然頼りにならん」
診察を終えた母は、少々おかんむりだった。
優しげなアンパンマン先生だが、なんだかいつも緊張していて、無理して作った笑顔が顔に張り付いているようだ。繊細で気が小さい母が心配ごとを並べ立てると、いつもちょっとだけ目をそらす。
そもそも彼はパーキンソン病の専門医。末期がんとうつ病を併せ持つ患者の心のケアは荷が重いのかもしれなかった。

 

 

「痛いときは、うぅーって声が漏れてしまうんよねぇ。とても抑えられんとよ」
こういう時の母は、ネガティブな愚痴が止まらない。
聞いてやらなくちゃとは思うのだが、正直これが、何よりキツイ。

「お父さんは、ふたりのときはいっつも機嫌悪いとよ。あんたがおるときとは別人みたい。『○○せんか!』って命令調で言われるとが、ほんとにいや」

「若いころから体の調子が悪くても『具合悪かとかー!』って怒られるけん、無理してごはん作りよった」

「パーキンソン病になったときも『そんな病気になりやがって』って言われたとよ」

どの話も、聞くのは、もう百回目。
父の言い草はたしかにひどい。わがままで自己中心的で、今の言葉で言うなら「モラハラ男」

 

でも、わたしにだって言いたいことはたくさんある。
実家で寝込んだわたしに、父が
「俺にうつるけん、はよ帰らんか」と言い放ったとき(→参照
かばってくれるどころか
「自分の家の方がゆっくりできるっちゃない?」と、同調したじゃない。
わたし、とってもショックだったんだから。
我が身かわいさに、いっつも娘を盾にして。言いにくいことは、小さい頃から全部娘たちに言わせてたから、(父を)増長させたんじゃないの?

今さらどうしようもないことだから、言わないけれど。

 

愚痴を聞かされるたびに、わたしの中にモヤモヤした黒い気持ちがどんどん積み重なる。澱のように溜まったそれは、だんだん大きな塊に育ってきて、自分でもどうしていいか分からない。

 

 

ホスピスのムーミンパパ先生は、言いにくいことをいうときでも、母をまっすぐに見てくれる。

 

「今までの痛み止めじゃぁ弱かとかもしれんですねぇ。麻薬系のよかとがあるとですよ」
「麻薬!!!」
「麻薬と聞くと皆さん驚かるっとですが、中毒になったりはせんですよ」

朝だけ飲んでいた痛み止めを、朝昼晩に増量。それでも痛い時は麻薬系の強い薬。
痛い痛みを抑えるには強い薬が必要だし、体の負担も大きい。
一時も痛い時がないように自分で体調を見ながら痛みをコントロールすることが大切だと言われて、母は納得できたようだった。

 

わたしもムーミンパパ先生みたいに、母の話を穏やかに聞いてやれたらいいのに
そう思ったときに、出会ったのが
プロカウンセラーの聞く技術 東山紘久著(創元社)」

プロカウンセラーの聞く技術

 

そこには
・愚痴は愚痴として流す
・受容するということは「あなたはそう思うのね」と認めること
「これはりんごです」「そうですね」と同じこと
・積極的に聞いてあげよう
愚痴は言えば心がすっとするし、言われた方は好かれて、いいことづくめ

と 書いてあった。
なるほど、母はホスピスに入りたくて言ってるんじゃない。
ホスピスに入りたいくらいに苦しい気持ちを分かってもらいたいのだ。

 

そう気づいたわたしは、母の愚痴を前よりもゆっくり聞いてやれるようになった。確かに言いたいだけ言えた時の母は、穏やかな気分になるようだ。あと少しの残り時間を、機嫌よく過ごしてほしい。

 

とはいえ、聞いたことを上手に流すのは今でもやっぱり難しい。自分がごみ箱になったような気がしてぐったり疲れる。
わたしが愚痴をこぼすときは、身内ではなく友だちに聞いてもらおうと思うのでした。(ここに書くのも、大きな助けです)

 

花村 桂子

6 Comments

  1. nobuko

    (TTTTTT0TTTTTT)桂子さん エライです。

    >ここに書くのも、大きな助けです

    少しでも気がまぎれるなら、も~いっぱい書いてくれっ!

    >愚痴を愚痴として流す。 

    それだけ取りあげれば、出来ないことではない気がするけれど、いつもいつも、自分的には他の事をしたい時にも、いつ果てるともしれない愚痴につきあうのは、辛いですよ。

    限られた時間の親に出来るだけ付きあおうと思っても、自分自身も無限の時間を持っている訳ではないものね。

    >あと少しの残り時間を、機嫌よく過ごしてほしい。

    桂子さん偉い。 親孝行な娘ですよおー!

    お母さんの代わりに、お門違いながらも、褒め称えさせていただきます。

  2. けい

    nobukoさん
    ほめてくださってありがとうございます (*・ω・*)

    母の愚痴ってのはつまりは家族や身内のワルクチですから
    黙って流すのは難しいのです
    とほほ
    でも、この本読んでずいぶん楽になりました
    その前はもっともっとツラカッタのです

  3. りーたん

    桂子さん
    とても興味深いです。
    私の今後の母との接し方や考え方を示唆しているようです。
    とっても参考になります~
    ちなみに、カウンセラーは最近、細分化しておりまして、
    「母娘カウンセラー」も存在するんですよ。
    「父息子カウンセラー」はいないんですけどね。

  4. YUKO

    プロカウンセラーの聞く技術
    両親がまだ生きてるときに、この本と出会えていればよかったかなぁ、と思いました。

    それにしても、桂子さんの文章は読み応えがありますね。凄い!!

  5. けい

    りーたんさん

    >「父息子カウンセラー」はいないんですけどね。
    そうかー(^_^;)
    わたしの夫の頭の中には筋肉が詰まっていると常々思っているのですが
    それが平和でいいのかもしれないですね
    母と娘は ぶつかりがちです

  6. けい

    YUKOさん

    >両親がまだ生きてるときに、この本と出会えていればよかったかなぁ、と思いました。
    ご両親のためにって優しいですね
    わたしはそもそもは仕事と当時思春期だった息子のために買った本でした

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