カルチャー

『Caravan to the future』、千年続くキャラバンの映画を見ませんか?

  • 2017/6/21

『Caravan to the future(未来へのキャラバン)』は、1000年前からサハラ砂漠で続く、遊牧民トゥアレグ族の「塩キャラバン」を記録したドキュメンタリー映画。撮影したのはアリサ・デコート・豊崎監督。フランス人の父と日本人の母を持つ女性ジャーナリストです。

全行程3000kmにおよぶ塩キャラバンにただ1人女性として同行したアリサは、ラクダに乗り、熱砂の上を歩き、4カ月かけて砂漠をわたる塩キャラバンを記録・撮影しました。資金援助が得られず「(キャラバン取材を)やめるか、1人でやるか」という状態になった時、アリサは3頭のラクダを買い、キャラバンと共に砂漠を歩くことを選びました。1000年続く塩キャラバンを未来へ繋げてゆくために、たった1人で活動を始めたのです。

キャラバンと共に歩きながらミレット(穀物)のおかゆを食べるアリサ
©alissa descotes-toyosaki : photo by Bardagham Imare

2017年5月。横浜で催された、『Caravan to the future』の上映会へ行って来ました。上映会は3部構成で、映画に続いてトークライブがあり、ラストはトゥアレグ族出身のロックグループ『TAMIKREST』のコンサートです。

トークライブで、アリサ・デコート・豊崎監督のお話を伺いました。

 

アリサが塩キャラバンを知ったのは、1980年代『ナショナルジオグラフィック』の記事。その時すでにトゥアレグ族のキャラバンは「The last caravan(最後のキャラバン)」、滅び行く存在として扱われていました。
1998年、アリサはアフリカ・ニジェールを訪れ、塩キャラバンに同行して40日間砂漠を旅をします。10数年前にthe last caravanと言われていたけれど、「やってんじゃん?(笑)みたいな」。連綿と続くその営みの力強さに感動したといいます。

砂漠の市場で塩とナツメを売るキャラバン
©alissa descotes-toyosaki

塩キャラバンは広大な砂漠に点在する町をつないで、野菜ー岩塩ー穀物と物々交換をしてゆきます。それは砂漠の人々の、自給自足と地産地消を支える大切な循環システム。「自給自足」、「地産地消」、「循環」といえば、まさに今世界中が未来への課題として掲げているキーワードです。

サハラ砂漠の塩キャラバンには、人類の未来への示唆が満ちている。監督・アリサがつけた『Caravan to the future』という題名には、示唆にあふれたこのキャラバンが、この先ずっと未来まで続いて欲しいというメッセージが込められています。

5日間砂漠を歩いてやっと井戸にたどりつく。
砂漠で生き抜く知恵は、キャラバンを通して父から息子へと伝えられてゆく。
©alissa descotes-toyosaki

ソーラーパネルを充電しながら行くアシスタント
©alissa descotes-toyosaki

『Caravan to the future』はソーラーパネルでカメラを充電しながら撮られています。「撮影は1人でするにしても充電をどうしよう?」と悩んでいた時、アリサはTVでベネディクト・アレンという冒険家のドキュメンタリーに出会います。ナミビア砂漠を単独横断しながら自らを撮影している画像を見て、アリサは即座にアレンに連絡。ロンドンへ飛んでアレン氏から、ソーラーパネルで発電する撮影方法を教わりました。
ラクダの背中にソーラーパネル。古来からのやり方で塩を運び続けるキャラバンの撮影を、現代の先端技術であるソーラーシステムが可能にしたことになります。

「両方あっていいと思んです」とアリサ。トラックで塩を運ぶのもいい、塩キャラバンもあっていい。どちらかがあることでもう片方を潰してしまうのはもったいないと訴えます。
現代に背を向ける訳ではなく、街ではトヨタの四駆を持ち、キャンプではラクダを20頭持ってキャラバンに出る生き方があっていいのではないかと。


アリサは今、サハラ砂漠の塩キャラバンを世界遺産に登録したいと考えています。

現代が支援することで、古来からのキャラバンを未来へ繋げて行こうという計画です。そのためには、多くの人に塩キャラバンを知って欲しい。そこで「自主上映プロジェクト」を立ち上げました。

自主上映で『Caravan to the future』を観ませんか?

観客149人以下なら、50.000円で映像を貸し出してもらえます。学園祭など学生主体のイベントなら、収容人数に関わらず30.000円で上映できます。貸し出す条件は、「お客様から料金を取ること」、たくさんの人に見てもらいたいからです。

50.000円なら、100人いれば1人あたり500円。今回行った横浜のライブバー「THUMBS UP」のように、スクリーンのあるレストランでフード&ドリンク付きのキャラバンナイトイベントをしてみてはいかがでしょうか。
学校ならばプロジェクターが無料で使えるし、何人見てもいいのです。200人いれば150円で、この素晴らしいドキュメンタリー映画を鑑賞できます。

今回記事を書くにあたり、アリサ・デコート・豊崎監督にコンタクトを取りました。彼女はパリ、東京、アガデス(ニジェール)を拠点に活動していますが、東京にいるタイミングで上映会と共にトークライブがあれば、塩キャラバンの話をしに行くと言っています。彼女が撮った膨大な画像もあるので、オファーがあれば写真展を開催することもできます。

アリサ監督は塩キャラバンを世界遺産に登録したいと望んでいますが、『Caravan to the future』を観た人は、ユネスコの認定いかんに関わらず、塩キャラバンがすでに超一級の世界遺産であることを理解するはずです。(文中敬称略)

⇒ 「サハラ・エリキ」   (トゥアレグ族の遊牧生活を支援するためアリサが立ち上げた協会)公式HP
⇒ 『Caravan to the future』自主上映の申し込み先
⇒ アリサ・デコート・豊崎監督連絡先 contact@sahara-eliki.org

(奥岡伸子)

 

 

8 Comments

  1. vai

    記事、楽しみにしてたよ。

    ほんとに、私も応援したいと思ったもん。映画を見ると、すごく遠いところのことなのに、繋がっているこの気球上の、同じ人間の営みだと感じられた。目の前に見てるこの日常の先の先の先に、失われつつある彼らの暮らしがあるって、感じられたんだよね。それが失われつつあることの理由の端っこに(もしかしたら最先端に)、膨大なエネルギーを消費する私たちの便利な暮らしがある…。でも、ソーラーパネルがこの撮影を可能にしたというのも、意味深いなあと思います。そこに私たちと彼らにとっての、同じ地平の未来があるような気がして。TAMIKRESTを呼んでくれたのも、個人的にはすごくうれしかった(ファンなんです)。亡命を余儀なくされるような故郷マリの状況にあって、ウスマンのリリカルな歌が訴えるのは、学校で自分たち固有の文字さえ教えられない子供たちのこと。ライブの時、この曲だけは歌詞を知ってほしいと翻訳を頼んでいたね。あのAratane N’Adaghを聴くと、砂漠の広がりのスケール感と、天蓋のように頭上を覆う星空と、その下にいる人々の孤独と、同時に、火を囲んで一杯のお茶を共にしているような温かさを感じます。

    1. nobuko

      お、vaiちゃん!
      私を『Caravan to the future』の上映会に誘ってくれた、TAMIKRESTを母のごとく愛するvaiちゃんです。いらっしゃ~い!
      本当にいい映画でした。経済、政治、エネルギー、人種、あらゆる問題がありながら映像が壮絶に美しい。何とかしてもう一度見たいばかりに、学校の先生や、イベントプロモーターにメールや電話で「上映会やらない?」と営業している私です。

  2. Gelsthorpe

    お知らせありがとうございました😊
    今の段階で「うちの学校のこの機会に使えそう」というようなアイディアは出てこないのですが、覚えておきますね❗️社会科の先生にもお知らせしておこうと思いました❣️

    思い出してくれてありがとうございました〜😊

    1. nobuko

      Gelちゃん、いらっしゃいませ! 読んでくれてありがとう。 うん、覚えておいてください。本当に素敵な映画です。 1000年続くキャラバン、多分昔も同じようにやっていたのだと思うと、タイムマシンで千年前をライブで見ている不思議な感覚があります。

    1. nobuko

      YUKOさん、いらっしゃーい。
      本当ですね。キャラバンは1日16時間歩くのだそうです。アリサは「車で撮影隊連れてついて行ったら見えるキャラバンは違っていると思う」と言いました。凄いジャーナリストですね。

  3. うらん

    壮大なドキュメンタリー映画ですね。それを日本とのハーフの女性が行ったというのはスゴイですよね。
    ラクダにソーラーパネルつけて撮影する・・・ってさすが現代!

    全然関係ないですが、砂漠つながりで今年公開されたニコール・キッドマン主演の映画「アラビアの女王 愛と宿命の日々」(タイトルがベタすぎ)を思い出しました。イラク建国の立役者として「砂漠の女王」と呼ばれた女性の半生を描いた映画で(見てないけど)、イラン・ヨルダン・シリアなどを旅して各地の部族と交流し、国境の制定などをしたそうですよ~。

    1. nobuko

      うらんさん、いらっしゃいませ。読んでくれてありがとうございます。
      >ラクダにソーラーパネルつけて撮影する・・・ってさすが現代!
      現代の技術が千年続くキャラバンの撮影を可能にしたんだから、すごいことですよね。アラビアの女王の様に、アリサさんがキャラバンを護れたらいいなと応援しちゃいます。

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